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【自立支援医療】精神疾患のお金の不安を解消する制度と利用条件を解説

精神疾患患者の多くが医療費の負担に悩みを抱えています。 精神通院医療を利用している人の中には、医療費の自己負担額が1割になる場合があることをご存じですか? 今回は、精神通院医療の自己負担割合を減らせる「自立支援医療」やその他自治体で申請可能な支援制度・保障制度について丁寧に解説します。 焦らずゆっくり休養や治療に専念できるよう、各制度について一緒に理解を深めていきましょう。

精神疾患患者が抱えるお金の悩み

うつ病や双極性障害、適応障害などの精神疾患患者の多くが、医療費や生活費などのお金のやりくりを不安に感じています。

1ヶ月当たりの生活にかかるお金の平均は下記の通りです。

  • 1人暮らし:約15.5万円
  • 2人暮らし:約25.6万円
  • 4人家族 :約28万円

しかし、精神疾患患者の場合、生活費に加え通院や投薬などの医療費があるため、1ヶ月の出費は平均以上かかっているのです。

精神通院でかかる医療費の平均は初診で約3,000円、再診で約2,000円、診断書の料金で約3,000円かかります。

この他にも検査代や薬代もかかる一方で、安定して働けなかったり休まざるを得ない状況だったりするため、精神疾患患者はお金の負担が大きいと感じやすいといえます。

このようなお金の悩みや負担を軽くする方法として、国や市区町村へ申請手続きをして受けられる、「自立支援医療」や「保障制度」を利用する方法があります。

参考:家計調査報告|総務省統計局

自立支援医療(精神通院医療)とは

自立支援医療(精神通院医療)とは、精神科の病気で外来への通院や薬代、訪問看護などにかかる健康保険の自己負担金額の一部を公的に支援する制度のことです。

健康保険の自己負担金額は3割ですが、自立支援医療を利用することで1割の自己負担で受診できるようになります。

制度の利用をしたい方は、まずは通院している担当医へ相談してみてくださいね。

ここからは、自立支援医療の対象となる精神疾患や必要な手続きについて詳しく解説します。

対象となる精神疾患

自立支援医療の対象は、精神疾患により通院での治療を継続する必要がある状態の方が対象です。

対象の精神疾患は主に下記の通り。

  • 統合失調症
  • うつ病、躁うつ病などの気分障害
  • 不安障害
  • 薬物などの精神作用物質による急性中毒又はその依存症
  • 知的障害
  • 強迫性人格障害など「精神病質」
  • てんかん

また、現在精神疾患の症状がほとんど消失している方でも利用できる可能性があります。

寛解の状態を維持し、再発防止のために通院治療を続ける必要がある場合は自立支援医療の対象者です。

なお、自立支援医療は病院または診療所に入院せず、精神疾患や精神障害のために行う医療が対象であるため、下記の場合には適用されませんので注意しましょう。

  • 入院医療の費用
  • 公的医療保険が対象とならない治療、投薬などの費用(例:病院や診療所以外でのカウンセリング)
  • 精神疾患・精神障害と関係のない疾患の医療費

参考:こころの病気への助成について|厚生労働省 みんなのメンタルヘルス

手続きの流れ

自立支援医療を受けるには、市区町村窓口にて手続きを行わなくてはなりません。

自立支援医療を利用するまでに必要な手続きの流れは下記の通りです。

自立支援医療を受ける流れを解説しています

まずは、通院している医療機関へ「自立支援医療」に関する必要書類を交付してもらいましょう。

医師からは、「診断書」や「意見書」を記入してもらいます。

次に、医師から受け取った診断書や意見書と必要書類を持参して、市区町村窓口で申請手続きを行います。

自立支援医療を申請をする際には、診断書の他にも「自立支援医療(精神通院医療)支給認定申請書」「医師の診断書」「世帯所得がわかる書類」「健康保険証」などが必要です。

手続きに必要な書類の一覧は下記の通りです。

自立支援医療を受けるために必要な書類を解説しています

なお、市区町村ごとに、上記に記載している書類の他にも提出を求められる場合もありますので、お近くの窓口のHPや電話で確認しておくと、スムーズに手続きが行えます。

申請手続き終了日から受給者証の交付までだいたい1ヶ月半ほど期間がかかるので、早めに手続きを完了させておくと医療費の負担を低く抑えることにつながります。

受給者証は、自宅へ郵送されますので受け取った後は、申請時に記入した精神病院・診療所と薬局へ持参。

通院のたびに持参することで、自己負担額は1割になります。

※申請時に記入した病院と薬局が、自立支援医療を利用できる「指定医療機関」になるため、転院したときには、変更手続きをしなくてはなりません。

1年ごとに更新が必須

自立支援医療の受給者証には有効期限があり、原則として1年ごとの更新が必須です。

更新の申請は、だいたい有効期間終了の3ヶ月前から受付開始されます。

更新手続きで注意すべきは、自分で有効期限を把握しておく必要がある点。

自立支援医療の更新のタイミングで市区町村から「更新手続きに関するお知らせ」が届くことはありません。

日頃から、通院時に病院から受給者証を返却されるタイミングで、こまめに確認して更新漏れのないようにしましょう。

万が一手続きを忘れて受給者証の有効期限を過ぎると、有効期限終了日から更新手続きが完了するまでにかかった医療費に関しては、1割負担が適用されないので要注意です。

なお、1年の間に治療方針の変更がない場合には、2回に1回は医師の診断書の省略ができることもあるので申請時に窓口で確認しておくことをおすすめします。

精神疾患患者が利用できる制度

自立支援医療の制度を一覧でまとめている表です

ここまで、精神疾患患者のお金の負担を軽減する制度として、自立支援医療について解説してきました。

精神疾患患者が利用できる制度は、「自立支援医療」だけではありません。

会社や市区町村などで手続きすることで、手当を受給できたり復職支援を受けられたりするので、自立支援医療以外の支援制度も一緒にチェックしておきましょう。

通院の負担を減らしたいとき

精神通院や薬代の負担を減らしたいときに役立つ制度には、自立支援医療の他にも「心身障害者医療費助成制度」が挙げられます。

心身障害者医療費助成制度とは、重度の障害のある人が医療を安心して受けられるようにすることを目的とした助成制度。

医療保険が適用になった病院や調剤薬局などの自己負担分を助成してもらうことが可能です。

なお、入院中の食事代や医療保険が適用外の場合については除きます。

休職中は健康組合から支援してもらう

会社を休職し、精神疾患の治療のために休養を要する場合には、健康保険組合から「傷病手当」を支給してもらえます。

傷病手当とは、業務外の原因で精神疾患や病気、ケガの療養で休業した場合に支給される被保険者とその家族の生活を保障するための制度で、健康組合より支給されます。

対象者は「健康保険組合の被保険者」であり、下記の4つの条件を満たしている方です。

  1.  業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
  2.  仕事に就くことができないこと
  3.  連続する 3 日間を含み 4 日以上仕事に就けなかったこと
  4.  休業した期間について給与の支払いがないこと

しかし実情として、人事担当者が傷病手当を認知していないケースも少なくありません。

すでに休職中の方もこれから休職を検討している方も、まずは人事部へ相談してみましょう。

手続きに必要な申請書類は、全国健康保険協会HPにてダウンロードできますので、下記リンクより印刷して会社へ提出することをおすすめします。

なお、傷病手当を受給できる期間は最大1年6ヵ月です。

定期的に傷病手当を受給できる環境にすることで、復職に焦らずに休養をとることにもつながるでしょう。

参考:健康保険傷病手当金支給申請書|全国健康保険協会

自己負担限度額を上回ったとき

自立支援医療では、通院を対象としているため入院や外来治療などは自己負担しなくてはなりません。

かかった医療費が高額になった場合には、自己負担限度額を上回った金額を「高額療養費」として、加入している医療保険から後日支払ってもらうこともできます。

申請窓口や申請方法は保険者によって異なるので、ご自身の健康保険証に記載されている保険者へ問い合わせてみてください。

なお、申請時には病院や薬局で支払った際の領収証が必須です。

手続きが完了するまで大切に保管しておく必要があります。

就労できない不安を解消したいとき

精神疾患患者の方で、「働けない罪悪感」や「早く復職や転職をしなくてはならない」と強い焦燥感に悩まされることも非常に多いです。

焦って復職や転職をすると、精神疾患の症状が悪化したり再び仕事ができなくなったりすることもあるので注意が必要です。

また、働き方は正社員だけではありません。

精神疾患患者の方には、フリーランスや在宅ワークなど自分のペースを守りながら仕事ができるように働き方を見直している人も多くいます。

復職を考えるようになったとき

うつ病や適応障害などを診断され休職した方の中には、症状が和らいできても職場に復帰できるかを不安視する人も少なくありません。

十分な休養を経て、医師からも復職を考えはじめても良いとの話があった際には、「リワークプログラム」の利用を検討してみてください。

リワークプログラムとは、休職中の方を対象に職場復帰を目指したリハビリを指します。

職場に復帰するために必要な体力面や精神面での準備を、精神科や心療内科などのクリニックで受けられます。

リワークプログラムを受けられる場所

リワークプログラムは下記の3つで受けることができます。

  • 医療機関(医療リワーク)
  • 地域障害者職業センター(職リハリワーク)
  • 企業(職場リワーク)

医療機関でのリワークプログラムは、復職だけでなく再休職を防止し症状の回復と安定を目的としています。

一方、地域障害者職業センターは復職までの支援、企業ではこれまでの業務に戻ることに問題がないかの確認を目的としています。

リワークプログラムの内容

リワークプログラムでは、実際の仕事内容に近い作業を行なったり、認知行動療法を行なったりします。

自身の病気について正しく理解すること、休職になった際の働き方を振り返る時間を過ごすことで再発防止を目指す方法です。

休職中に感じるお金の不安と解消法

精神疾患で医師から休業するように指示されても、休職中のお金が不安で休むことを決断できない人も少なくありません。

休職してもいつ復職できるかわからない、医療費の自己負担軽減だけでは家計が苦しいという場合には、精神疾患患者が利用できる保障制度を検討してみましょう。

また、働くことが困難な場合には「精神障害者保険福祉手帳」が交付され、障害者年金を受給できるケースもあります。

働き始める見込みがない

症状が重症で働き始める目処が立たないことで、お金を切り崩すことになり将来に不安を感じることもあるでしょう。

障害者手帳の中には、うつ病や統合失調症などの精神疾患を持つ人が取得可能な「精神障害者保険福祉手帳」があります。

精神障害者保健福祉手帳の交付を受けることで、税制上の優遇を受けられるため生活費の負担が大きいと感じている場合には、一度市区町村窓口や担当医へ相談してみましょう。

精神障害者保健福祉手帳の交付によって受けられる優遇措置の一例

  • 所得税・住民税・自動車税の控除
  • 公共料金の割引
  • 鉄道やバス・タクシー代の割引
  • 公営住宅の優先入居 など

※地域によって優遇措置の内容は異なります。

精神障害者保健福祉手帳をもつことで、不利益が生じることはありません。

精神疾患の症状が徐々に軽減したときには、手帳を返却することも可能ですので、利用にためらわずに前向きに検討してみてくださいね。

参考:精神障害者保健福祉手帳|厚生労働省 みんなのメンタルヘルス

支援制度だけでは家計が苦しい

精神疾患の方向けの保証制度を一覧でまとめた表です

支援制度を利用していても、家計が苦しかったり安定した暮らしが確保できなかったりすることもあるでしょう。

これらの支援制度以外にも、市区町村には保障制度がありますので、支援制度と並行しながら利用することも検討してみてください。

なお、市区町村によって必要書類や条件などが異なりますので、まずは通院している担当医へ相談、相談窓口へ確認するようにしましょう。

生活保護

生活保護は市区町村窓口で手続きが行える保障制度です。

法律で定められている「健康で文化的な最低限度の生活」を保障することを目的としています。

生活保護の内容は下記の通りです。

  • 日常生活に必要な費用である生活扶助
  • 賃貸住宅の家賃を支払うための住宅扶助
  • 義務教育を受けるために必要な費用である教育扶助
  • 医療サービスを受けるための医療扶養
  • 介護サービスを受けるために必要な費用である医療扶助
  • 出産に関わる費用である出産扶助
  • 就労に必要な技能の修得等に必要な費用である生業扶助
  • 葬儀のために必要な葬祭扶助

参考:生活保護制度 |厚生労働省

特別障害者手当

特別障害手当とは、精神または身体に著しく重度の障害を有する方に対して支給される手当です。

毎年原則として2月、5月、8月、11月に前月までの手当が支給されます。

支給月額は27,300円で、国制度ですが申請手続きは市区町村で行います。

参考:特別障害者手当について|厚生労働省

障害年金

障害年金とは、精神疾患や病気・けがが原因で、生活や仕事などが制限されるようになった場合に受け取ることができる年金です。

初めて医師の診療を受けたときに、国民年金に加入していた方は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた方は「障害厚生年金」が請求できます。

参考:障害年金|日本年金機構

特別障害者給付金制度

特別障害者給付金制度とは、国民年金に任意加入していなかったことにより、障害基礎年金等を受給していない障害者の方を対象とした福祉的措置です。

対象となるのは下記の2種類に限られます。

  • 平成3年3月以前に国民年金任意加入対象であった学生
  • 昭和61年3月以前に国民年金任意加入対象であった被用者等の配偶者であり、当時、任意加入していなかった期間内に初診日がある。さらに現在、障害基礎年金の1級、2級相当の障害の状態にある方

※ただし、65歳に達する日の前日までに当該障害状態に該当し、請求された方のみ

参考:特別障害給付金制度|日本年金機構

生活福祉資金(低金利融資)

生活福祉資金とは、うつ病を含む障害者や低所得者、高齢者などを対象に生活を経済的な側面から支えるとともに、在宅福祉と社会参加の促進を図ることを目的とした貸付制度。

ただし、生活福祉資金はあくまで「貸付」なので、返済の義務があります。

参考:生活福祉資金貸付制度 |厚生労働省

【Q&A】Third Talkに寄せられた不安・疑問にお答えします

本コラムを運営しているThird TalkのYouTubeにて、「メンタルドクターSidow × 対話 ─精神疾患で仕事とどう向き合う?」が公開されました。

視聴者の方から寄せられた、精神疾患に関わるお金の不安や疑問についてこのコラムでお答えします!

精神通院の医療費が高くて負担

通院における医療費の負担は大きいと感じる精神疾患患者や経験者は非常に多いです。

精神疾患患者の医療費負担が大きいと感じられる理由として、定期的な通院が欠かせないことが挙げられます。

症状が安定するまでは1〜2週間に1回のペースで通院するため、診察代だけで1ヶ月で2,000円×4回=8,000円もかかります。

さらに精神疾患患者は複数の薬を処方されることも多いため、薬代もかなりかかっていると考えられます。

医療費の負担を軽減したい方は、「自立支援医療」の利用ができないか、一度市区町村窓口へ問い合わせしてみることをおすすめします。

制度を利用するための申請が億劫

支援制度や保障制度は必ず手続きが必要で、用意する書類も多くあります。

そのため、申請手続きができる状態ではなかったり手続きに出向くこと自体を億劫に感じる人も多くいるでしょう。

精神疾患は家から出ることも難しかったり、さまざまな書類を不備なく揃えることに難しさを感じる方もいます。
各種手続きを代理人に行ってもらうことも可能ですので、ご自身で申請が難しい場合には家族やパートナー、友人を頼るのも方法のひとつです。

代理人申請の場合のみ必要な書類もあるので、市区町村窓口へ確認してから手続きを進めることをおすすめします。

どこで手続きする?

各種制度を利用する際には窓口での手続きが必要ですが、すべて同じ窓口ではないので注意が必要です。

  • 自立支援医療:市区町村の福祉課・障害課など
  • 傷病手当:会社に書類を提出し、健康組合から支給を受ける
  • 障害年金:最寄りの年金事務所または年金相談センター

申請に期限がある?

自立支援医療の申請には期限はありません。

これまでの通院分をさかのぼって払い戻しすることはできませんが、精神通院医療の利用開始日以降は負担額を軽減することが可能です。

現在通院している方はまずは担当医へ申請に必要な書類を用意してもらいましょう。

自立支援制度はある程度通院しないと利用不可?

自立支援医療を受けるには、医師から交付された診断書や意見書を提出しなくてはなりません。

医師も診察をした上で継続的な通院が必要かを判断しているため、2〜3回ほど通院してから相談すると良いでしょう。

労災の休業補償と自立支援制度は同時に使える?

仕事上での業務が原因で精神疾患を発症した場合には、労災認定され労災の休業補償を受けられる場合があります。

労災の休業補償と自立支援医療は同時に利用することは可能です。

自立支援医療が、医療費の自己負担額を減らす役割である一方で、休業補償は生活するための手当の支給が目的です。

しかし、労災の休業補償と健康組合の傷病手当の併給は、給与を越えない場合のみ可能ですので、注意しましょう。

まとめ|公的制度を利用しながら焦らず療養していきましょう

このコラムでは、精神疾患患者のお金の悩みを解消するための、公的制度をご紹介しました。

生きていく上で、お金は欠かせないものであり不安材料になりやすいものです。

働くことが難しい、安定して働けないと悩んでいる精神疾患患者の方は、まずご自身が利用可能な支援制度や保障制度がないか確認することから始めてみましょう。

そして、病院で担当医へ支援制度について相談してみてください。

お金の不安から解放されて、ご自身のペースで休養や療養ができる日々を心から願っています。

この記事を監修した人

清水真心-プロフィール画像
清水真心
ライター/メンタルトレーナー

内向型HSPの気質を持つライター。前職の銀行員時代にFPを取得。HSPカウンセラーの資格も保有しています。
現在は心理学とメンタルトレーナーの知識を活かし「こころと暮らしを穏やかに」をテーマにメディアcallme.(カルミー)を運営。手帳や手書きの良さについても音声配信やYouTubeなどで発信しています。

【Twitter】
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